THE PLANETARY REPORT


1999年7/8月号

風と気象

画像の上半分は赤道の北側に当たり、風は西方向(画面の左側)に向かって吹く。下半分は赤道地域で、速い風が東に向かって吹く。
   
 木星の風の測定もガリレオ・ミッションの主な目的の一つであった。以前の探査機と地球上の天体望遠鏡で撮られた画像では、雲のレベルでの風は、概ね東から西の方向に吹き、風速は秒速100mに達することはわかっていた。ハッブル宇宙望遠鏡の最近の観測により、ガリレオが進入した緯度で観測された細いジェット気流は、木星の自転と同じ方向に秒速150mまたは170mで流れていることが示唆された。このジェット気流が、木星の雲の下の相当深い部分まで流れ込んでいるのかどうかはわからない。

 プローブは秒速180m以上の風に遭遇し、風が見える雲の下の深くまで延びていることを明らかにした。参考までに申し添えるが、トルネードは通常時速300〜500km、ハリケーンの今までの最速記録は時速123kmである。木星の風がどのようにして発生するのか正確にはわからないが、非常に熱い内部から出てくるエネルギーが風の源であることを示す証拠をプローブはもたらしてくれた。これは、すべてを太陽からのエネルギーで賄っている地球の気象とは著しく異なっている。

 プローブは、木星の気温と圧力との関係についても測定した。深さが増すと、気温も気圧も上昇する。プローブは、地球の海面に加わる圧力の約24倍(24バール)の地点に達っするまで信号を送ってきた。その地点の気温は150℃であった。プローブが測定し始めた地点の圧力は約0.4バールで、気温は冷たく−140℃であった。上層大気では、プローブの減速をベースに速度計が大気の密度が決め、これから気温と圧力を算出する。圧力1バールの上空約300km以上の大気では、気温は予想より数百度も高く、900℃を超える高さに達した。

 小型望遠鏡でも木星にかかる雲は見える。最上層の雲は、アンモニアの結晶に特徴的に木星の雲を彩る他の幾つかの化合物の混合体である。プローブの観測で、水硫化アンモニウムの結晶で出来た中間の雲の層と水の氷滴で出来た一番下の雲の層を見ることが出来ると我々は期待していた。

 しかし、地球の観測で分かったことだが、プローブは木星の比較的明るい領域に入ってしまった。つまり、最上層の雲の底部に進入し測定を始めたのだ。プローブは降下しながら、太陽光の減少の度合いを測定して木星の雲はほとんどアンモニアの結晶であることを発見した。プローブはまた、中間の雲の層を観測し、雲はおそらく水硫化アンモニウムの結晶であろうことを示唆した。この雲は非常に薄く透明度は約1マイルだった。我々の予測に反して、この雲の下には厚い水滴の雲はなかった。これは、プローブの進入地点における大気中の水蒸気が少ないという事実と符合する。

 1979年、探査機ボイジャー2号は、木星の夜の面を撮った際に雷光を観測した。雷光のほとんどは、木星の北緯45〜50度の領域近くで起こった。プローブには、周囲で起こる雷光を撮る光学センサーが取り付けられていたが、何も写らなかった。

 プローブは、彼方で雷光が発する無線信号(轟音)を捉えた。雷光の1単位面積当たりの周波数は、地球上の雷光より短いようである。しかし、雷光のエネルギーは、地球上の雷光の約10倍もある。プローブは木星の大気に進入するまでに、磁場に捉えられている高エネルギーの荷電粒子を測定した。この放射線帯は、地球上空のヴァン・アレン帯に似ている。木星の半径の4%に相当する雲の天辺の領域で、プローブはヘリウムと重いイオンからなる放射線帯を発見した。

木星の稲妻


今後の作業

 プローブの測定データは、すべて地球に送られてきたが、データが木星と太陽系について何を語るのか、それを理解するには暫く、おそらく数年かかると思われる。多くの新しい疑問が現れてきている。勿論、これこそ惑星探査の探査たる所以である。新しい情報が古い考えを変え、そして解明すべき新しい疑問を提起する。このようにして、我々の太陽系全体に関する理解は増していくのである。

 オービターは、1997年12月までのミッションで、木星、四大衛星(ガリレオ衛星)および木星の磁場について情報を送ってくるだろう。1996年6月21日、オービターは太陽系最大の衛星ガニメデに遭遇した。7月半ばには、初めてガニメデの素晴らしい表面地形の画像が公開された。今後の探査からどんなに驚くべき発見が飛び出すのか、それは「神のみぞ知る」である。


参考データ

ガリレオ・プローブの測定経過
 ガリレオ・プローブの進入から信号が途絶えるまでの時間は、61.4秒であった。進入中は、速度計が プローブの減速の度合いを測定し、大気の密度及び最後に圧力と気温が計測された。減速スイッチと指示系統の接続不良のため、プローブは大気の測定を予定より53秒遅れて開始した。

 
バール
km
プローブの進入
10−7
450
パラシュート展開
2.86
0.4
15
熱シールドの前頭部投棄
大気の測定開始
0.4
14
熱シールドの後頭部除去
メイン・パラシュート展開
オービターがプローブの
無線信号を追跡
3.8
0.5
10
雲の層を通過
8.1
1.6
−13
プローブの無線信号が途絶える
61.4
〜24
−140


木星の組成


 ガリレオ・ミッションの前までは、木星の中心核は、内惑星の組成のほとんどを占めるシリコンや鉄のような重い元素でできているものと考えられていた。中心核を囲んでいるのは、水素がとてつもない圧力で圧縮されて、金属の振る舞いをする液体金属水素である。この中心核は木星の半径のほぼ3/4まで広がっている。液体金属水素は通電性がある上、その振る舞いで木星の磁場を作り出す。

 液体金属水素の上には、液体水素と液体ヘリウムがあり、これ等の液体は木星の外部近くの領域では気体となる。ガリレオ・プローブが進入した距離はほんの僅かではあったが、判明した事実は木星全体の解明につながる可能性を秘めている。