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無人探査 vs 有人探査、来世紀の宇宙競争の行方
ルイス D.フリードマン(惑星協会専務理事)
かつて人間は、未知の探検には自ら目的地に出かけなければならなかった。しかし、今や科学技術の粋を集めたロボットが、人間の代役を果たすことが出来る。人間か、それともロボットか。未来の太陽系探査に関するフリードマン博士の見解である。
この小論は、今年2月に行われた「科学の進歩」に関する米国協会の会議、5月の国際宇宙開発会議および7月の英国の公開討論会で、惑星探査における人間の役割ついて述べた私の見解をまとめたものである。
私は、世界のあらゆる会議で、我々が携わっている宇宙競争について考えを述べてきました。この問題は、人類の文明の将来を決定付けるものであり、人類という種族の生存を左右するものでもある。同時に、我々の生き方の優秀性を証明するために勝利しなければならない競争である。
このような言い方をすると、アメリカが旧ソ連と競った月探査で何かし残したことがあるかのように聞こえるかもしれません。しかし、私が言いたいのは、もう一つの競争、即ち、惑星探査における人間とロボットの競争である。
1980年代初頭の惑星協会の講演で、ローレル・ウィルケンニング氏(惑星協会理事)は、問題は我々が火星探査を行うかどうかではなく、探査に携わる人達が何語を話すかということにすぎないと言っている。彼女は、英語、ロシア語、日本語、中国語あるいはフランス語をその例として挙げている。しかし、これからは0と1で構成される二進言語を加えるべきであると、私は考える。
1960年代においては、人間は努力を積み重ねて、月に到達するという比類無き実績を築き上げた。それから数十年経って、地球の低軌道へ舞い戻った。これからの数十年の間に、国際宇宙ステーションが地球軌道に建設され、多くの火星探査機が地球にデータを送ってくるようになれば、宇宙探査への関心が高まる。
アメリカも、長期宇宙滞在の過酷さに対処することを習得しつつある。事実、アメリカの宇宙飛行士がロシアのミールに搭乗して、アメリカの長期宇宙滞在記録を更新した。このようにアメリカは、人間と宇宙との関係に関する知識の面では最先端を走っている。
しかし、アメリカのロボットの技術は、更に急速に進歩している。ロボットの小型化、ロボットの遠隔操作およびバーチャル・リアリティーにみられるような情報処理の進歩により、受信端を除けば宇宙探査に人間の存在は必要で無くなっている。
火星上の数千箇所に配置されたミニ・ローバー(小型探査車)がそれぞれ一日当たり数十メガバイトでデータを送信することを想像してみて下さい。バーチャル・リアリティーを使えば、宇宙飛行士の作業能力を凌駕する火星探査の経験をすべて地球上の人間に与えることができる。また、この方がはるかに安上がりである。
西暦2196年、人類は何処に
例えば、2196年、否、2096年においてさえも、ロボット技術の進歩が奈辺にあるのか、私には想像できないし、人類という種族の進歩が奈辺にあるのか、これも想像し難い。遺伝子に関する知識とその管理は急速に進歩するだろうが、これが一体何を意味するかはますます不可解になる。私が意味する宇宙競争にはこうした側面もあり、さりながら人類の存続を左右するものである。
人類は火星を開発して移植者をそこに定住させ、更に複数の惑星に居住する種族に進化して行くのか。あるいは、人工衛星が拾い集めたデータをもとにホログラフィー(画像再生技術)を写して火星環境の疑似体験をする模擬部屋にこもるカウチ・ポテト族(実際に行動を起こさない人種)の手遊の道具となるだけなのだろうか。
もちろん、私が描く人間とロボットの競争については論難されるべき点もある。しかし私が努めて心がけているのことは、現在の宇宙探査計画に盛られている有人宇宙飛行の方針について様々な意見を喚起することである。世界の有人宇宙飛行計画は、史上最大の国際的な工学プロジェクトである宇宙ステーションの建設という国際協力作業に効果的に集約されつつある。アメリカの宇宙飛行士は、再び長期の宇宙滞在を行い、そしてアメリカの製のロボットは再び、月に、火星にそして地球近傍の小惑星に向かう。
我々は太陽系以外の惑星を発見しつつある。地球以外の生命の可能性について、新たな情報を集める計画も持っている。1997年には、火星に三つのミッションが打ち上げられ、探査機が月を訪れる予定である。また、ガリレオは木星の詳細な観測に加えて、四つのガリレオ衛星の地形地図を作成し終えてしまっているだろう。
同時に、発見される太陽系以外の惑星の数がおそらく倍増し、信じて貰えないかもしれないが、アメリカとロシア合作の宇宙ステーションが地球軌道を周回していることだろう。もしこれが実現すれば、タイム(米)、ディー・スピーゲル(独)、マッチ(仏)など世界の一流誌が特集で取り上げ、他の雑誌も取材に血眼になるに違いない。
今までの有人探査へのステップは正解であった。月が第一候補地であるべきあったし、実際にそうなった。6回の月へのミッションで、12人の宇宙飛行士が月に着陸した。「次の有人探査のターゲットは?」。
可能性としては、もう一度月に行くか、地球近傍物の小天体(小惑星)、火星、あるいは低地球軌道の宇宙構造物での滞留かのいずれかである。あるいは、何処にも行かないことも考えられる。この答えは、技術面から見た実現性と、政治的な意味における理論的根拠の有無によりほとんど決まる。技術的には可能性が低かったが、政治的に強力な支援を受けて実施されたアポロ計画の後は、この二つの条件がかみ合わず、有人探査については明確な解答が出されていない。
月に人間を送り返すことが、技術的には可能であることははっきりしている。しかし、その理論的根拠が欠落している。月の有人飛行は、科学的探査を除けば何も意味がないし、その科学探査も人間抜きの方が安上がりだという理由で、その意義は割り引かれている。
ジャック・シュミット氏は最初の月科学者となり、同時に最後の月の探査者ともなった。「月の有人探査の復活」を論う会議やシンポジウムは何度も開かれたが、ロボットの遠隔操作による無人探査より「より速く、より良く、より安く」実行できるという論拠は出てこなかった。
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