THE PLANETARY REPORT


1999年7・8月号

探査機ガリレオと探査機カッシーニ
マイケル・J・S・ベルトン


1995年12月7日、ガリレオは火山活動を続ける衛星イオのわずか1000km上空を接近通過した。探査機の技術的なトラブルのため、残念ながら科学的に有意義なデータは収集出来なかった。2000年2月から始まる最終ミッション(GMM:ガリレオ・ミレニアム・ミッション)で、ガリレオはイオのわずか200km上空を接近通過する。画面は、木星を背景に溶岩やプリューム噴火の上空を接近通過するガリレオの想像画。


 地球以外の天体の探査史上、ガリレオ・ミッションは最も複雑な要因が絡み合った探査である。JOP(木星オービター・プローブ・ミッション)として、1970年代に計画されたのがガリレオ・ミッションの始まりである。その内容は、今までには見られなかった最も複雑・多岐にわたる野心的な木星探査計画で、様々な議論の後に、打上げを1982年とすることで1977年に正式に認可された。これは、NASAがスペースシャトルの開発を優先したために、延期また延期と遅れ遅れになってしまったためである。結局、打上げを1995年そして木星到着が1997年とすることに決まった。

 ガリレオは2年間で一次ミッションを完遂し、その間プローブ(小型探査機)を木星の大気の中に投入し、木星の総括的な探査と4つの大型衛星(ガリレオ衛星)の探査を行った。ガリレオは頑健・強壮そのもので、1997年、更に2年間のエウロパを探査する延長ミッションを成し遂げた。そして現在、老たりとはいえ順調に機能するガリレオは、カッシーニとのジョイント・ミッションを試みる新たな役割を果たそうとしている。筆者は、アリゾナ州のツーソンにある国立光学天文台に勤務する天文学者である。惑星探査に関する幅広い豊富な経験の持ち主で、NASAのマリナー(水星と金星探査)やボイジャー(外惑星)ミッションに参加、現在はガリレオ・ ミッションの撮像チームを率いている。

左の画像には、イオの表面から噴き出す二つのプリューム噴火(左側の縁と中央)が見える。左の縁に見えるのは、南アフリカの火と火山の神の名前が付けられたピラン・パテラのプリューム噴火。
右側の明暗境界線に見えるのは、ボイジャー(1979年)とガリレオ(1995年)の接近通過時に活動していたプロメシウスのプリューム噴火である。1997年6月28日、ガリレオがイオの60万km上空を通過した時に撮影した。プロメシウスは、19年間ずっと噴火を続けていると考えられる。右側の上はピラン・パテラ、下はプロメシウスのプリューム噴火を拡大したものである。


 探査機ガリレオ(以下、ガリレオ)の燃料が尽きようとしている。しかも、木星の磁気圏から放射される強力な貫通性を持った放射能の攻撃を受けているのである。また、ガリレオが老朽化している。にも拘わらず、ミッション関係者の興奮は高まりつつある。待望久しい、衛星イオの科学探査と土星を目指す探査機カッシーニ(以下、カッシーニ)とのジョイント・ミッションの目途がついたからである。最大限の科学成果を得るために、もう1年5ヵ月間、ミッションが続けられることになったのである。

 1995年12月、ガリレオは初めて木星に到着した。その途上、イオからわずか900km離れた領域を通過する際、ガリレオは木星の放射線の猛攻を浴びた。しかしながら、ガリレオはこの過酷な環境においても作動出来ることを証明した。従って、これ以外の不測の事態が起こらなければ、未知の天体イオに存在する火成地表、プリューム噴火で生ずるガス、溶岩などの噴出物、火山や火口の画像、そして地質、測光計及び分光計の測定によるデータを得ることが出来たはずであった。ところが、致命的とも言えるテープレコーダの不具合が原因で、ガリレオが最終的に木星に向けて接近飛行を行おうとした矢先、木星の大気に投入されたプローブ(小型探査機)から送信されるデータの受信に不備が生じないよう、搭載カメラの操作を中止せざるを得なくなった。

 にもかかわらずそれ以来、ガリレオはほぼ4年に及ぶ衛星エウロパの接近通過や軌道の外側の安全領域における観測において、数々の素晴らしい発見を成し遂げた。 そして今また、ガリレオは衛星イオの「悪意に満ちた環境」に舞い戻る時を迎えているのである。イオとの遭遇は当初の一回を三回に変更され、NASAにとって技術的に最も困難な目標を達成するためのお誂え向きのチャンスとなる。これは、NASAが計画したミッションの中で技術的に最も困難な挑戦となる。ガリレオの放射線対応能力の限界をはるかに超えたミッションであり且つ最高の成果を得るために、残されたガリレオの燃料すべてがこのミッションに注ぎ込まれる。

 このミッションでは、未来の宇宙開発の礎を築くために、土星系(主に土星と衛星タイタン)を探査する探査機カッシーニとのジョイント・ミッションを計画した。これは、科学ミッションの科学上の好成果を得るための他に、外部太陽系探査のバトンをガリレオからカッシーニに引き継ぐ象徴的なミッションとするためである。