NUCLEUS


朝日新聞 1983年11月2日夕刊

「核戦争が起きれば人類破滅」米ソ科学者が連帯
衛星中継でテレビ討論


 核戦争の回避を願う米ソの著名な科学者同士が、核戦争による地球環境への壊滅的な影響についてデータを交換し合う討論会が1日、ワシントンとモスクワを結ぶテレビの衛星生中継を通じて行われた。  

 討論は31、11月1日の両日、ワシントンで「核戦争後の世界」をテーマにしたシンポジウムが開かれたのを機に、両国の科学者の交流を図ろうと企画されたもので、米側はコーネル大のカール・セーガン教授ら2人、ソ連側は科学アカデミーのユーリー・イズラエル博士ら4人が研究結果を発表。ワシントンの会場には約300人、モスクワの会場には約30人の科学者が参加して、スクリーンに映し出される相手の表情やスライドのデータを見ながら熱心に耳を傾けた。  

 まずセーガン教授がシンポジウムで発表した報告内容を要約し、米ソの全面核戦争が起きた場合、大気中に巻き上げられる粉じんで太陽光線が遮られ、地上は数ヶ月間、零下の極寒の世界が続くこと、この影響は南半球でも深刻なこと、放射性降下物による放射線の量は従来の予測より10倍も多く人の致死量に近いこと、などを説明した。  

 これに対し、イズラエル博士も核爆発による地球の寒冷化と大気汚染による生態系を完全に破壊し尽くすという予測を発表。ニコライ・ボチコフ博士は、たとえ人類が生き残ったとしても、放射線による影響で正常な出産は望めず、生まれてくる赤ん坊も染色体異常などで育つことが出来ないため、全滅につながる恐れがあると遺伝学的な立場から危機を強調した。  

 討論では「米ソの科学者が独自に行った予測が同じだというのは重要なことだ。この結果を世界中のなるべく多くの人々に知らせようではないか」「核戦争が人類の終えんにつながることが確認できた。核戦争は絶対に起こしてはならない」といった意見が双方から出され、そのたびに両会場には大きな拍手がわいた。そして司会役の米コロラド大のウォルター・ロバーツ教授が「地球という惑星と人類の永続のために、今日の成果を世界の指導者たちに訴えるよう力を合わせよう」と米ソの科学者の連帯を誓って、1時間半の討論を終えた。