**********************************************************************        ☆☆☆☆☆ TPS/Jメール ☆☆☆☆☆ ********************************************************************** 今週のもくじ  ・YMコラム ・ヒューストンレポート  ・ホットトピックス ********************************************************************** ********************************************************************** ☆☆ YMコラム ☆☆ (NO.459)    高度800キロの交通事故    さる2月11日午前1時55分(日本時間)、シベリアの上空約800 km    で、アメリカとロシアの人工衛星が衝突しました。この衝突で数    百個のスペースデブリ(宇宙ごみ)が広範囲に飛散した模様です。    衝突したのは1997年に打ち上げた米国の衛星電話用の通信衛星イ    リジウム(560 kg)と、1993年に打ち上げたロシアの通信衛星「コ    スモス2251」(900 kg)です。ロシアの衛星の方は、打上げの3年    後から使用不能に陥っていたようです。でも宇宙の軌道には優先    道路という考え方がないので、「喧嘩両成敗」なのです。    宇宙での大型の衝突としては、1997年、フランスの通信衛星セリ    ーヌが、ロケットの大きな破片と軌道上でぶつかり、一瞬のうち    に機能を停止したことがありましたし、衛星と小さなスペースデ    ブリとの衝突もたびたび起きてはいます。しかしこの規模の衛星    どうしの衝突は、過去には記憶がありません。      今回の衝突によって破片が飛び散った範囲は、高度400〜3000 km    にわたるとみられています。日本も実験棟「きぼう」で参加して    いる国際宇宙ステーションの軌道は高度400 kmなので、NASA(ア    メリカ航空宇宙局)は、地球観測衛星や国際宇宙ステーションな    どへの影響を慎重に調べているところです。    なお、イリジウム社は、「イリジウム衛星」66基を運用して、世    界デジタル衛星携帯電話サービスを展開しており、今回の衝突で    失われた1機のための影響はそれほどないそうですが、代わりの    衛星を準備しています。      地球周回軌道をめぐっている衛星のうちでも、人間の乗っている    ものは、特に注意しなければなりません。宇宙飛行士が船外活動    をしている場合はなおさらですね。これら有人宇宙活動に関係の    あるものについては、地上から特別の注意をはらっていて、衝突    のために深刻な危険が予測されるときは、いったん軌道を変更し    て回避しているのです。スペースシャトルの場合、スペースデブ    リとの衝突を避けるために、一回のミッションで5、6回の回避行    動をとっているそうです。    宇宙でも交通整理は大変ですね。    ところで、今回の衝突でクローズアップされているスペースデブ    リ(宇宙ゴミ)について、少々ご紹介しておきましょう。    1957年に当時のソヴィエト連邦によって、世界初の衛星スプート    ニクが軌道に乗せられて以来、人類が軌道に送った衛星は6000個    を超えています。でもこれらの衛星は、初めに乗せられた軌道に    いつまでも留まっているわけではありません。    地球を囲む大気は、通常は100 kmくらいまでと言われていますが、    実際には薄くなりながらももっともっと遠くにもあるのです。衛    星はその薄い大気の中にずっと浸かりながら運動しているので、    大気の抵抗のために少しずつエネルギーを失って、軌道の高さが    落ちていきます。そして100 kmから150 kmくらいの高さまで落ち    てくると、大気が濃いために急激に地球に向かって落下を始め、    そのほとんどは大気中で消滅してしまいます。    でも、故障したり、太陽電池の寿命が尽きたり、制御用の燃料が    なくなったりして、もう衛星として役に立たなくなったものも、    「粗大ゴミ」として軌道に残っているものは多いのですね。おま    けに衛星を運んできたロケットや、宇宙でのいろいろな出来事に    よって軌道に放出された部品や破片が、いっぱい軌道上を高速で    「うろついて」います。    アメリカ戦略司令部(SATCOM)の統合宇宙オペレーションセンター    の発表では、現在実際に仕事をしている衛星は約800個あるそう    です。それ以外の人工の軌道上物体は、いわば「ゴミ」なので、    それらを総称して「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」と呼んでいま    す。それらは非常に高速で飛んでいる為に、わずか1 cmの宇宙ゴ    ミでも衛星を破壊し、10 cmの塊になるとスペースシャトルでさ    えも破壊してしまう可能性があります。そのため、SATCOMは、常    に1万3000個くらいの物体の追跡を行っているそうです: http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200902121034&photo=zoom    これまでの観測・研究によると、大きさが10 cm以上あって地上    から観測できるゴミは約7000個、1〜10 cmのものは約20万個、も    っと小さな1 mm以上のゴミを含めると実に350万個に達するそう    ですよ。ゴミならば回収した方がいいに決まっているんですが、    宇宙のゴミはなかなかいい方法が見つからないんですね。でも、    打上げの時はできるだけゴミを増やさないように工夫すること    も含めて、世界中の人々によって、スペースデブリを減らす努    力は続けられています。    ここ数年、毎年100個前後の衛星が打ち上げられており、宇宙開    発の進歩に伴ってスペースデブリの量も急速に増えてきています。    今回は、NASAが、衝突を起こす潜在的危険性は年々増してきてい    ると警告したばかりの衝突事件でした。    オーストラリア、シドニー発――老朽化したロシアの宇宙ステー    ション『ミール』が来月地球に落下させられるが、その落とし方    たるや、まるでバスケットボールをリングに向けて放り投げるよ    うなものだ――ニュージーランドとチリの間の誰もいない広大な    海がミールのリングとなる。    1972年のこと。ニュージーランドの南島に、重さ約14キロの謎の    チタン製ガス容器が4個落下したことがあります。現地の科学者    は、キリル文字が刻み込まれたこの球形容器は、ロシア(当時ソ    連)の宇宙探査機のものであると判断しました。落下のタイミン    グから見て、おそらく金星に向かった探査機のものだと推定され    たのです。そこに使われているチタン技術の先進性に、アメリカ    の専門家たちは驚きました。当時のアメリカが有していた技術よ    りも明らかに優れていたからです。当時の宇宙法のもとでは、ニ    ュージーランドにはその容器を旧ソ連に返還する義務があったの    ですが、肝腎の旧ソ連がそれらを認知しようとせず、所有権も拒    否したため、ニュージーランドは取り扱いに苦慮しました。結局    のところ、落下したのが農地であり、そこに住んでいた農民が記    念に欲しがったので、やむを得ず農民に返したといいます。    つづいて1978年には、原子炉を積んだ旧ソ連の軍事衛星「コスモ    ス954号」がカナダに落下し、放射能を帯びた破片が散乱し、周    囲が汚染される事故が起きています。    そして1979年には、スカイラブの一部がオーストラリアのパース    郊外から遠く離れた砂漠地帯に落下しています。当時17歳だった    スタン・ソーントンくんという青年が、自宅の屋根に突き刺さっ    たスカイラブの破片数個を見つけ、サンフランシスコ行きの飛行    機に飛び乗りました。そして『サンフランシスコ・イグザミナー』    紙の編集室へ駆け込んだソーントンくんは、誰よりも早く編集室    に宇宙ステーションの破片を届けたことへの褒賞として、1万ドル    を獲得したのです。    最近では、2001年3月23日に大気圏に突入したロシアの宇宙ステー    ション「ミール」は、地上の大騒ぎをよそに、計画通り無人の南    太平洋上に制御落下されたことは記憶に新しいところですね。あ    の騒ぎをコントロールしていた私は、落下後の記者会見で、「世    の受験生の苦労を尻目に、落ちる落ちると言い続けた大人たちを、    受験生諸君、許してください」とやって喝采を浴びたのでした。    あれから8年も経ったのですねえ。(YM) このコラムに関するご意見・ご感想は下記アドレスまでお寄せ下さい。 matogawa@planetary.or.jp ********************************************************************** ☆☆ ヒューストンレポート ☆☆ (390号)    元宇宙飛行士たちNASAの将来に意見    マーク・カリュウ    著作権2009 ヒューストン・クロニクル    2009年2月8日    ライス大学のジェームス・ベーカーIII社会政策研究所が発表し    た、これからのNASAに関する新しいレポート(HR389)は、マ    ーキュリー、アポロの時代、およびシャトル時代の元宇宙飛行    士たちから、驚きの反響を呼んでいる。    あるものは、宇宙局は月へ戻る計画をスクラップにして、環境    とエネルギーの問題に取り組むべきであるとするレポートの推    奨を支持する。またあるものは、宇宙局はやはりより深く宇宙    に飛行するべきであると主張する。そして、またあるものは、    NASAは現在も充分な予算を与えられていないし、将来はますま    す予算が少なくなると考えている。レポートに対するいくらか    の反響を掲げる。    ウオルト・カニングハム、76歳、アポロ7で飛行    彼は月へ帰ることの緊急性はないと見ている。「われわれが50    年以上も前に達成したことで、誰が中国やインドと競争したい    と思うものか。」 彼はまた地球温暖化に対する関心を偉大な    る欺瞞と考えており、レポートの筆者は宇宙局の真の問題を取    り上げていないと信じている。    「NASAは、ばかばかしいほど、ここ数年予算がない。なにかを    しない限り、ずるずると滑り落ちるのを避けがたいのではない    か。」    サリー・ライド、57歳、物理学者、宇宙へ飛行したアメリカ最    初の女性    彼女は、危険性はあるとしても、NASAおよび16カ国の国際的パ    ートナーの努力を無駄にしないよう、シャトルの寿命をあと数    年延長して、宇宙ステーションをサポートすることに全面的に    賛成。ライドはまた、エネルギーと環境の問題がこの世代にあ    るのは、ベイビー・ブーム世代にスプートニクが出現したよう    なものだと信じている。    「われわれの立場を明確にするには時間がかかるでしょう。し    かし、われわれの長期的な挑戦は、エネルギーと環境問題にわ    れわれが巻き込まれている状況をよくすることです。」    ジョン・グレン、87歳、地球を周回した最初のアメリカ人、元    上院議員    彼は多くの提案に賛成である。特に国際宇宙ステーションは放    棄すべきではなく、宇宙探査の指導的役割をはたすべきである    とする筆者たちの信念に賛成。    「われわれは1150億ドルを投じたもっともユニークな実験室を    もっている。しかし、地球にいるわれわれにとってすばらしい    価値があるかもしれない研究能力を止めようというのか? こ    れは愚行だ。」    ジーン・カーマン、74歳、1972年アポロのコマンダー、月面を    最後に歩いた宇宙飛行士    彼は、宇宙探査は若者を奮起させる最高の教育であると、その    価値を高く評価している。「ライト兄弟がわれわれに残した最    大の遺産は、より高く、より早く飛ぶことを促し、われわれが    不可能と思ったことを成し遂げることを夢想するよう奮起させ    たことだ。」 NASAを宇宙探査から方向転換させるというレポ    ートに驚いている。    「わたしは未知なるものを探査するように計画され、組織され    ているNASAのような組織に、かれらがしようとしていることに    ひどく驚いている。われわれは環境については、石油関連、自    動車関連のその他の政府機関をもっている。われわれがいかに    生存し、世界をいかに救うかを考えるのはT. Boon Pickensの    仕事である。」    キャサリン・ソーントン、56歳、シャトル・ミッションで4回    飛行、現在バージニア大学の副学部長    彼女は、NASAは少ない予算で多くの方向に引き回され過ぎてい    ると考える。ベーカー・インスティテュートが推奨する地球温    暖化と代替エネルギーの問題へNASAが4年間集中すれば、宇宙    探査が遅れるだけである。    「エネルギーと環境問題が4年間で解決するとは思えません。    NASAの方向付けを議論するときは、永久的な方向付けを議論し    なければなりません。」    フランクリン・チャン・ディアズ、最多宇宙飛行回数でタイ記    録保持者、7回飛行    彼が創業したプラズマ推進システムを開発する企業、Ad Astra    Rocket Co., の会長。    「NASAはハイテクとイノベーションの先端から離れてしまった。」    とチャンは言う。彼はベーカー・インスティテュートの多くの    提案には賛成である。しかし「NASAが置かれているのは苦しい    立場だ。人間をある時期(2020年)までに限定された予算(2008    年時点で173億ドル)の範囲内で月へ戻さなければならない。」    「宇宙局はひどい仕打ちを受けている。」 Astronauts from the past weigh in on NASA’s future By Mark Carreau Copyright 2009 Houston Chronicle Feb. 8, 2009 ********************************************************************** ☆☆ ホットトピックス ☆☆    ● 深刻化する宇宙ゴミ問題      ついに危惧されていた人工衛星どうしの衝突事故が発生し      た。去る2月10日、米ソの人工衛星が高度約800kmで衝突し      て破壊され、600個以上の宇宙ゴミが撒き散らされた。米      中による過去の衛星破壊の実験により、数千個の直径      10cm以上の宇宙ゴミから成る帯が地球を取り巻いている。    ● 米国の科学誌に掲載された「かぐや」の観測の成果      平成19年末から定常観測を続けている月周回衛星「かぐや」      の成果を紹介する4つの論文が、米科学誌サイエンスの2月      13日号に掲載された。小惑星探査機「はやぶさ」及び太陽      観測衛星「ひので」に次ぐ快挙である。    ● 米国の月周回探査機4月に打ち上げへ      NASAは来る4月24日、有人月探査(2020年頃)再開のための      第1段階として、月探査機ルナー・リコネッサンス・オービ      ター(LRO)を打ち上げる。LROは、2ヵ月にわたる月周回軌      道の温度環境下での耐性試験を終えている。 各記事の詳細は日本惑星協会ホームページでご覧になれます。 http://www.planetary.or.jp/ ********************************************************************** ********************************************************************** ■タイトル  :TPS/Jメール ■発行元   :NPO法人 日本惑星協会          http://www.planetary.or.jp/ ■発行日   :毎週水曜日 ■発行システム:インターネットの本屋さん『まぐまぐ』          http://www.mag2.com/ ■マガジンID:0000022732 「TPS/Jメール」は、上記URLよりいつでも登録/解除可能 です。 ********************************************************************** **********************************************************************